
前回、仕事をする理由について話をしたけど、今日はどんな仕事を選ぶべきかについて話をしようと思う。どこの大学に進学するかとか誰と結婚するかなど、人生では大きな決断をしないとけないときが来るけど、仕事を選ぶことはその中でも一番重大な決断かもしれない。社会に出たあと何十年も仕事をすることになるから、自分に合わない仕事を選んでしまったら何年も苦労することになるかもしれない。苦労すること自体は悪いことじゃないんだけど、自分の性格や能力に合う・合わないを見極めないまま、自分に合っていない仕事を続けていたら不幸な人生になってしまうと思うんだ。だから今日の話はちゃんと聞いてほしい。
これからの仕事観
父さんよりも前の時代、つまり“じいじ”・“ばあば”の時代は終身雇用といって、社会に出たら定年まで1つの会社で働くことが当たり前だったんだ。でも1990年代以降、日本の経済は低迷を続け、会社がすべての社員を定年まで雇用することはほぼ不可能になってしまった。今では1つの会社で一生働くという昔の常識は崩れてしまっている。
2021年の今、転職や副業といったことがいろいろなところで話題になっているけど、サヤカとシュンが大人になるころには同時に複数の職を掛け持ちしていたり、転職していろいろな会社で働くことが当たり前になっているだろう。今日はそういった状況を踏まえて仕事選びについて話をしていこうと思う。
仕事選びのヒント1:「なりたいもの」ではなく「やりたいこと」を考える

仕事を選ぶときに職業から選びがちなんだけど、それはあまりいい方法ではないということをまず話そうと思う。
大人は子供に「将来何になりたい?」という質問をよくするよね。シュンは幼稚園のころは新幹線の運転手と言っていたし、サヤカは花屋さんだったと思う。世の中には数えきれないほど仕事の種類があって、パイロットや電車の運転手、プロ野球選手などすぐに思いつきやすい職業と、そうでない職業があると思う。そして、子供の時にはイメージしていない職業が実際には多いんじゃないかと思う。たとえば同じ会社に入社しても、ある人は営業をするし、別の他人は経理を担当する。ものを作る会社なら設計を担当する人もいれば、製造を担当する人もいる。多種多様だ。だから自分が知っている職業から仕事を選ぼうとすると、職業についての幅広い知識がなければどうしても選択肢が狭くなる。
それに対して「どんなことをしたいか」を基準にして選ぶと、選択肢が広がる。たとえば「パイロットになりたい」という夢を持っていたとしよう。もしパイロットを目指すのであれば大学を出た後、ANAやJALなどの航空会社に就職してパイロットを目指すというのが一般的な道筋になるだろう。でも、もっと広く「飛行機を操縦したい」と考えるのであれば防衛大学校から航空自衛隊に入るという選択肢もあるし、ヘリコプターのライセンスを取ってドクターヘリの操縦をするといった選択肢も考えられる。
さらに、もし自分がやりたいことに見合う職業が今ないのであれば、自分で新しい職種を作るということも選択肢もありうる。今はYouTuberなど昔にはなかった職業が出てくるような時代だから、現存の職業に縛られる必要はないわけだ。
だから、まずはやりたいことを考えてみるのがいいんじゃないかと思う。別の言い方をすれば、職業名など「名詞」で考えるんじゃなくて、何をするかという「動詞」で考えたほうがいいということだ。
仕事選びのヒント2:情熱は必ずしも必要ない

仕事選びについては、自分がやりたいことや情熱を持てることを仕事にするべきかどうかという議論がある。多くの人は、自分がやりたいことを仕事にして生きていきたいと考えるだろうけど、世の中そんなに甘くないということも感じている。実際、誰もがみんな自分が好きなことを仕事にして生きているわけじゃないよね。
野球好きの子は、将来プロ野球選手になりたいと思うだろうけど、中学、高校と野球を続けていくなかで次第に厳しい競争にさらされるようになる。甲子園に出た高校球児でさえ、その多くはプロ野球の道をあきらめて別の道へ進む。たとえプロ野球選手になれたとしても、成績を残さないといけないプレッシャーと戦う必要があるわけで、子供のころのような野球をする楽しさはなくなっているだろう。
このように仕事としてやるということは、ものすごく高いレベルを要求されるから、生半可なレベルでは太刀打ちできないし、途中で挫折する可能性も高い。もしも、情熱を持ち続けて、競争に勝ち抜いていく覚悟があるというなら挑戦すればいいと思うけど、それは非常に苦しく辛い道になるはずだ。だから好きというだけで仕事を選ぶのはそれ程いい方法ではない。情熱があるかどうかは職業選びには必ずしも必要なことではないんだ。
仕事選びのヒント3:やりたいことが分からない場合は?

世の中には自分でやりたいことが見つからないという人も多いように思う。そんな場合はどうしたらいいのだろう?
まず言いたいのは、あることが面白いかどうかはやってみないと分からない。それも本気になってある程度の時間取り組まないと分からないということだ。
たとえば、自分が面白いと思っているゲームを友達に紹介して、ちょっとやらせてみたら「どこが面白いのか分からない」という反応をされたとする。そんなときどう感じるだろうか?「もっとちゃんとやれば面白さが分かるよ」と反論するかもしれない。「こんなに面白いのに、それが分からないなんてバカなの?」と悪態をついて友達をなくすかもしれない。
どんなことも、それを面白いと思っている人がいるということは、そこには何らかの理由があるはずだ。でもそれを理解するためには、時間と本気度が必要になるんじゃないかと思う。
仕事も同じで、ある仕事のやりがいや面白さが理解できるようになるには、本気で取り組む必要がある。
だからやりたいことが見つからないというなら、「絶対にやりたくない」ということでなければ、まずはやってみることだ。やっていく中でその仕事のやりがいや面白さが分かってくるということもある。ある程度長い時間やっても、その仕事の面白さが分からないなら、その時点で仕事を変えればいい。いろんなことに挑戦してみるなかで自分のやりたいことが見つかってくるはずだ。
仕事の幅を広げながら、仕事を選んでいく

仕事選びについて、今日はとりあえず思いつく3つのアドバイスをしたけど、最後にそれらをまとめてみようと思う。
これからの時代、転職や副業が当たり前になって1つの会社に留まる必要はなくなるし、同時に複数の職をかけもつようになるだろう。いくつかの会社を移り変わったり、いろいろな職を経験するなかで自分に合う仕事を探していけるようになると思う。自分の得意なことでも、世界の頂点で競争するとなるとそれは苦しいことになるけど、そこまで高いレベルでなくても他人や社会に貢献できるし、そのような活動は楽しいと感じるはずだ。だから好きなことは、メインの仕事ではなく副業などサブの仕事としてやっていくというのは1つの考え方だと思う。
仕事で大切な要件は、(1)生活費を稼ぐこと、(2)やりがいを感じられること、(3)他人との人間関係や労働環境が快適であることが挙げられると思う。だけど、これら全てを1つの仕事でかなえようとすると難しい。そのような夢の仕事は、そもそもそんなものはないかもしれない。でも、それぞれを別の仕事でかなえていくことはそんなに難しくないんじゃないかと思う。つまり、収入源となるメインの仕事のほかに、収入は低いけどやりがいが感じられる仕事を組み合わせるということで、トータルで全ての要件をかなえることはそれほど難しくないと思う。
だからこれからの仕事選びの戦略としては、まずは自分がすでに得意なことを掘り下げ(さらにスキルに磨きをかけ)、それを軸にして仕事の幅を広げていくことだ。やっていて楽しいこと、やっていて苦でないことはまずやってみる。おそらくそういったことは自分の得意なことであって仕事の軸になりうる。別にそのスキルで日本一になれといっているのではなく、100人に一人くらいの人材(クラスで一番や学年で一番くらいのレベル)には努力すればなれると思う。そして、複数の得意なことを掛け合わせることを目指すんだ。3つの得意なことを掛け合わせれば、100×100×100で100万人に一人の逸材になれる。これを突き詰めていけば、いくらでも稀有な存在になれるだろう。
そのためには自分の強みを知るための自己分析も同時に大切だ。自分は何が好きで何が嫌いか、どんなことには頑張れてどんなことは苦手なのかを振り返ってみよう。また、「自分のことは自分が一番分かっている」と思うかもしれないけど、他人からはよく見えるのに自分では気づかないことあるものだ。周りの人に、自分の長所を聞いてみるといい。意外な答えが返って来るかもしれないよ。
まとめ
幸せな仕事に就くというのは、“あなたでないといけない”とか“〇〇さんにお願いしたい”と相手から求められるような人材になることだと思う。なぜなら社会的な動物である人間にとって、誰かから必要とされることはまさに‟幸せ”とつながっているからだ。だから、これからは個人のアイデンティティに基づいた仕事をする時代が来るのかもしれないと父さんは思っている。そういった時代では、個別の職業を超えた「職業“俺”」「職業“私”」ということを誰もが目指すようになるのかもね。
今日の話はこれでおしまい。じゃあ、またね。


