今日は 『世界のエリートが実践する、心を磨く11のレッスン』という本を紹介しようと思います。この本はとても素晴らしい本で、「人生で読むべき本50選」には必ず入ると言ってもいいと思います。ぜひ読んでほしいのですが、残念ながら出版社の(株)サンガが倒産となり、新品としては手に入りにくい状態になっています。ですので、今回の記事でこの本のエッセンスの一部でも紹介できたらと思います。

苦しみの原因は「理想像」

人は誰でも無意識のうちに自分の理想像を作り上げています。そして多くの人はその理想像に固執するあまり、自分より優れた人(その理想像に自分より近い人)との比較で劣等感を持ったり、逆に自分より劣った人(その理想像に自分より遠い人)との比較で優越感を持ったりして、心が安定せずに苦悩を感じます。本書ではそのように自分の理想像に振り回されている状態を「アンコンシャス」と呼んでいます。これは「コンシャス(意識がある状態)」の反対語で、自分の心の不安定さがどこから来るのか気づいていない状態を指します。

そういった人生の苦悩から抜け出すには、自分がどんな理想像を持っているのかを第三者の目線で眺めることではっきり理解し、最終的にその理想像を手放すことが必要だと本書では述べられています。それこそが「コンシャス」という状態であり、世界で活躍している人たちはこの状態にあるというわけです。

自分が持っている理想像を知る

人間がもつ典型的な理想像は以下のようなものでしょう。

  • 頭がいい人
  • 社会的に正しい人
  • 性格のいい人
  • 面白い人
  • 頼りにされる人
  • 感謝される人
  • 完璧な人
  • 美しい・かっこいい人
  • 愛される人
  • 地位の高い人・偉い人
  • 成功している人
    など

自分がどのような理想像を持っているか、自分の心の動きを日ごろからよく観察して、知っておくことが重要です。ここで誤解してほしくないのは、理想像を持っていること自体が問題なのではありません。理想像はそこに向かって努力する原動力になり得ます。問題なのは無自覚のうちに理想像に振り回されてしまうことです。自分が持っている理想像に振り回されないために、自分がどんな理想像に執着しているかに「気づく」こと(=コンシャス)が必要なのです。

ただし、これらのなかで「頭の良さ」や「地位の高さ」「成功者」「美しさ・かっこよさ」という理想像にこだわると、いくらでも上には上がいるから、心穏やかに過ごすことは非常に難しくなるので注意が必要です。

「スルースキル」を身に付ける

誰かに否定されたり、拒絶されたりしたとき、私たちの心は乱されてしまいます。相手が実際に否定的なことを言ったわけでなくても、自分で勝手にそうじゃないかと想像することで心が乱されます。そのような状態では正しい判断はできないし、仕事などで優れたパフォーマンスを発揮することも難しくなります。

毎日、多くの重要な決断をしなければいけない世界のエリートは、心を乱す出来事に対してどのように対処しているのでしょうか?著者は、世界のエリートは心を乱す出来事があっても、それを引きずらず、平常心を保つために「スルースキル」を身に付けていると言います。このスルースキルを身に付けるためには、まず自分が心を乱される本当の原因を知る必要があります。そしてその原因はほとんどの場合、自分が無意識のうちに作り上げた理想像にあるわけです。

人生の苦悩は相手やその状況が作り上げているのではなく、自分が理想像にしがみついていることが原因になって生まれるものです。人は理想像に固執し、しがみついた瞬間に苦悩の状態に陥るものです。繰り返しになりますが、理想像を持つこと自体が悪いのではなく、いつでもどこでも「この理想像のように見られたい」と頑張ってしまう「しがみついた状態」が問題なのです。そこから抜け出すためには、まず自分がどんな理想像を持っているのかに「気づく」こと(=コンシャス)です。

人生の苦悩から抜け出すためには「理想像とは違う自分も悪くない」と考えてみることです。「頭が悪くてもOK」「太っていてもOK」「やる気がなくてグータラでもOK」「仕事ができなくてもOK」「大して出世していなくてもOK」「ブサイクなところがあっても愛嬌があってOK」と考えてみましょう。少し心が軽くなるのが感じられるはずです。実際のところ、自分の理想が達成できないからといって、命を落とすわけではないのです。

人生で目指すべきは、心穏やかに幸せな人生を送ることだと私は思います。自分の理想とのギャップによって心が乱されそうになったら「そんな自分でもいい」とスルーする。そして逆説的ですがメンタルをニュートラルに保てる人が、結局は仕事でも私生活でも成果が出やすいものなのです。

ここでの話をまとめると、世界のエリート(本書では「コンシャスリーダー」と呼んでいます)は、自分の心を動きを日ごろからよく観察して、自分がどんな理想像を持っているかはっきり気づいており、心が乱されることがあっても、スルーして平常心を保てるので、仕事で成果を出し続けていけるということです。

「すべき」に囚われない

世の中には「社会のルールは守るべき」「老人には優しくするべき」「困っている人は助けるべき」「親孝行するべき」など、「~すべき」というモラルに固執する人がいます。もちろんそれらの主張には正しい側面はあるし、モラルを完全に無視するのは社会を維持する上で問題があります。しかし、「何が正義で何が悪か」は立場や考え方で変わる相対的なもので、スッパリと決まるものではありません。

だけど、モラルに囚われていると自分の中の正義が絶対だと思うようになってしまいます。そのためモラルに囚われている人は他人に対して厳しくなりがちです。さらに、その厳しい視線は自分にも向けられるので、自分がそのルールに沿えなかったときには、自分自身を責めてしまうことになります。つまりモラルへの固執は他者だけでなく自己否定の原因となるわけです。結果として、生きづらさを感じることになります。

このようにモラルに囚われている人の多くは何かしらの生きづらさを感じているので、その生きづらさを他人に向けて、ちょっと「その人ルール」から逸脱した人を激しく責める傾向があります。本人は正義感から他人を責めていると思い込んでいますが、一番の問題は自分自身だということに気付いていないのです。このように何が正義で何が悪かをキッパリ決めつけていると、自分も他人も苦しめ生きづらくなるというわけです。

心を磨くコンシャスのレッスンでは「良い・悪い」というモラルに基づいた判断はしません。ただ自分がどんな状態か、どんな理想像を持っているかに「気づいている」ことだけを目指します。この考え方はマインドフルネス瞑想ともつながるものでとても面白いと思います。

社会を維持する上でモラルは大事だけれど、たとえモラルが破られる場面があったとしても他人も自分も激しく責め過ぎない。そういったバランス感覚が大切なのです。このような、“ある種の「適当さ」”を持っていることが、スルースキルの真髄でもあります。世の中の動きに対してもっと気楽に考えることで、心に波風を立てずに常に高いパフォーマンスを維持し幸せに生きる。それが生きていく上で大切なスキルなのでしょう。結局は、毎日心穏やかな状態でいれる人が勝ちということだと思います。

さいごに

最初にも言いましたが、この本はとても素晴らしい本なので、もし機会があれば手に取って読んでもらいたいと思います。今回だけでは伝えきれなかった内容がたくさんあるので、別の機会に紹介したいと思います。