今日は精神科医の樺沢紫苑さんが書いた本『The Three Happiness 精神科医が見つけた3つの幸福』から、異なる種類の幸福感があるという話をしようと思う。とても大切な考え方だと思ったから、サヤカとシュンに知っておいてほしいと思うんだ。

脳のはなし

最初にちょっと難しい話をしよう。脳の中にはたくさんの神経細胞があって、お互いにつながってネットワークを作っている。神経細胞は電気信号を発生して、次につながっている神経細胞に情報を伝えているんだけど、実は神経細胞と神経細胞のあいだには小さな隙間があって電気が直接伝わらないようになっているんだ。電線が切れていたらそれ以上電気が伝わらないのと同じだ。

じゃあどうやって情報が伝わっていくかというと、伝達物質と呼ばれる化学物質が神経細胞の末端から出て、それが次の細胞に作用することで情報が伝わるようになっている。なんで電気で直接情報を伝えないで化学物質を介するといった一見、非効率的で面倒なことをやっているかというと、神経細胞間の情報の伝わり方を伝達物質の量で調節するためだと考えられている。

この神経の間の情報伝達をしている物質にはいくつかの種類があって、それが今日の話で出てくるセロトニン、オキシトシン、ドーパミンだ(実際の脳にはこれら以外にもグルタミン酸やグリシン、GABAなど別の物質も情報伝達に使われているらしい)。

3種類の幸福とは

脳の活動によって我々の感覚や感情、思考が生じるわけだけど、さきほど紹介したセロトニン、オキシトシン、ドーパミンといった伝達物質が放出されると私たちは幸福感を感じるらしい。でもそれら伝達物質の違いによって幸福の感じ方が違うらしいんだ。これからそれぞれの伝達物質によってどんな幸福感が起こるのかを説明しよう。

1.セロトニン的幸福

「心」と「身体」が健康なときに感じる幸福で、セロトニンが分泌されているときは「体調が良い」「爽やかだ」「清々しい」といった感じがするそうだ。気分が落ち込んだ状態とは正反対の状態と考えてもいい。実際、セロトニンの分泌が少なくなると、うつ病になることが分かっている。

2.オキシトシン的幸福

「つながり」や「愛」から得られる幸福で、オキシトシンが分泌されているときは「安心」「やすらぐ」「満たされている」といった感じがするそうだ。友達とおしゃべりをする、恋人や子供とハグをする、ペットと触れ合うといったときに感じる幸福感だと言ったら分かりやすいだろうか。

3.ドーパミン的幸福

「お金」や「成功」から得られる幸福で、ドーパミンが分泌されているときは高揚感を感じる。「気持ちいい!」「たのしい!」といった感覚が起こる幸福感だ。

簡単にまとめると

  • セロトニン的幸福 = 心と身体の健康
  • オキシトシン的幸福 = 他者とのつながり・愛
  • ドーパミン的幸福 = 成功・お金

ということになるだろう。

3種類の幸福の違い

3つの伝達物質に関係する幸福感について説明したけど、それらの違いについてもう少し踏み込んで説明しよう。

書籍『The Three Happiness 精神科医が見つけた3つの幸福』では、セロトニン的幸福やオキシトシン的幸福を「“Be”の幸福」と呼んでいる。「そこにいること自体」が幸福であり、(そこに幸福があることに)気付くことがポイントとなる幸福感だ。童話の「青い鳥」では、幸せの青い鳥は最初から自分たちの家にいたわけだけど、幸福とはもともと自分に与えられているものに気づくことなんだという教訓は昔からよく言われることだと思う。

それに対してドーパミン的幸福は「“Do”の幸福」と呼んでいて、何かをすることで得られる幸福だ。勝負に勝ったり、テストで満点取ったり、仕事で表彰されたといった「分かりやすい幸福」だ。

両者の大きな違いは、セロトニン的幸福やオキシトシン的幸福は、いくら感じてもその幸福感が減少しない、つまり慣れが生じないのに対して、ドーパミン的幸福は慣れが生じて、やがて同じ強さの刺激では幸福を感じなくなるという点らしい。ドーパミンと依存症の間には深い関係があることが知られている。脳科学ではお金や食べ物、アルコールといった「報酬」がもらえるとき脳内でドーパミンが出ていることが分かっているけど、そういったものは全て依存症になる。つまり、ドーパミン的な幸福はすぐに慣れが生じるため、一度満たされても同じレベルでは物足りなくなり、どこまでも際限なく欲望を追い求めてしまうという危険性があるんだ。

幸福の優先順位

このように言うとドーパミン的な幸福が何か“悪者”のように聞こえるかもしれないけど、そうではないんだ。この3つの幸福感はどれも人生において大切なものだけど、追い求める順番が大切なんだ

3つの幸福感の中で一番大切なものは、セロトニン的な幸福だ。心身の健康があってこそ、様々なことに喜びを感じられる。仕事依存症の人のように健康を犠牲にして成功を追い求めるのは、建物の基礎をつくらずに家を建てるようなもので、いずれ倒壊する(健康を害して不幸になる)。だから土台であるセロトニン的幸福が一番大切なんだ。

その次に家族や人間関係の幸福であるオキシトシン的な幸福が来て、最後にドーパミン的な幸福が来る。一緒に成功を喜べる人間関係があって初めてドーパミン的な幸福、社会的・経済的な成功が意味を持つと考えたら納得できるだろう。

幸福になりたければ「下から積み上げる」ことが大切だ。つまり、まずは心身の健康、セロトニン的幸福を満たし、その上に豊かな人間関係から来るオキシトシン的幸福を積み上げる。そして最後に、出世やお金持ちになるといった社会的・経済的な成功を追い求める。この3つの幸福の順番を誤らないことが大切だ。

ドーパミン的な幸福は分かりやすいだけあって、多くの人が真っ先に追い求めようとする。でもそれではダメだというのが今日の話の一番重要な点だ。

さいごに

父さんも若いときはドーパミン的な幸福を追い求めてきたように思う。健康や人間関係を犠牲にしても「自分が優れていることを世の中に証明したい」っていう気持ちを強く持っていた。でも結婚して、サヤカとシュンが生まれてから変わったように思う。自分の健康と家族が大切だって気付いたんだ。若い人はドーパミン的な幸福を追い求める傾向があると思うけど、サヤカとシュンにはセロトニン的な幸福とオキシトシン的な幸福をないがしろにしてはいけないということを忘れないでほしい。

今日の話はこれでおしまい。じゃあ、またね。

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